COLUMN AGA基礎知識
シャンプーや育毛剤、サプリはAGAに効くの? 抜け毛は治る? 医師が解説!

抜け毛や薄毛の悩みを自分自身で解決できれば……と、シャンプーや育毛剤などといったヘアケア剤をなんとなく使い続けている人はいないでしょうか。最近は、髪によいとされるサプリへの関心も高まっているようです。今回はこうしたセルフケアにありがちな誤解や落とし穴について、医師の立場から考えを述べたいと思います。
目次
シャンプーなどのヘアケア製品で薄毛の悩みは解消する?
抜け毛や生え際の後退が気になり始めたとき、まず、薄毛によいとされるシャンプーやコンディショナーといったヘアケア製品を試してみる人が多いと思います。これらに発毛効果はあるのでしょうか。
医薬品でない限り、発毛効果は期待できない
薄毛によいとされるシャンプーは、多少値が張る製品が多いものの、手が出ないほどではありませんので、これなら自分で何とかできそうと思う人も少なくないでしょう。
しかし、こうしたヘアケア製品によって毛髪が生え、AGAが治ることは残念ながら期待できません。
そもそも、ヘアケア剤をはじめ髪や頭皮につける製品は、「医薬品」でない限り、発毛の効果効能をうたうことは法律上できないのです。似た表示に「医薬部外品」がありますが、こにような製品の場合は治療ではなく症状の防止や衛生維持を目的につくられています。
育毛シャンプーや薬用シャンプーなどと表記されていると、いかにも即効性がありそうなイメージをもってしまいますが、頭皮を清潔にしたり、うるおいを与えたりするなどで間接的に毛髪が生える環境をよくする影響はあっても、医薬品でなければ発毛そのものに対する効果は認められていないのです。つまり、発毛効果が科学的に証明されているわけではありません。
髪によい成分=毛が生えるわけではない!
確かに、ヘアケア剤で毛髪の健康によい成分が配合されているものは多いでしょう。よく見聞きするケラチンなどはその代表といえます。ケラチンは髪を構成する重要なタンパク質です。しかし、この成分はすでに現在生えている毛髪に外から補うだけであり、毛が生えていないところに対して新たに髪を生やす作用は残念ながらありません。
「髪にハリ・コシを与える」といった宣伝文句で販売されるシャンプーやトリートメントを使うと、さわった感じに変化が現れたり、ハリやツヤが出てきてボリュームもアップしたように見えたりするかもしれません。しかし、こうした効果はすでに生えている髪が配合成分によってコーティングされたために得られているにすぎず、実際に新たな毛が生えたり、毛髪が増えたりしているわけではないのです。
AGAを治す目的なら、「治療」が最短の道
そもそも、毛髪は毛包から生えはじめ、分裂を繰り返しながら伸びるものですから、発毛そのものは一般的なシャンプーのような、外からつけるものの影響は受けないはずです。
育毛シャンプーなどを使うことで、多少毛が太くなったり現状維持ができたりする効果はあるかもしれませんが、薄毛自体が治るわけではないのです。
それがわかっているうえで、使用感や香り、洗いあがりなどが気に入ったので使う、というのであれば問題はありません。しかし薄毛を改善する、AGAを治す、といった目的で「効くかも、効きそう」と思って使い続けると結局、時間と費用の無駄になってしまうと言わざるを得ないのです。
それよりも、AGAを診療するクリニックへ行き、専門知識をもった医師の診断、治療を受けるほうがはるかに効率よく、かつ、確かな発毛効果が期待できるといえるでしょう。
市販の育毛剤でAGAは改善する?
頭皮に直接つける育毛剤も、多くの種類が出回っています。いかにも発毛が促され毛髪が増えそうなイメージですが、実際はどうなのでしょうか。
発毛に直接効く成分が配合されているわけではない
育毛剤や養毛剤、発毛促進剤……薄毛で悩んでいる人にとってはいかにも興味を引かれるネーミングですが、これらも見かけにまどわされないよう、注意して確認することがポイントです。
インターネットなどで盛んに宣伝されているような市販品の広告を見ると、有効成分と称して様々な成分名がずらっと並んでいるものが多く、いかにも効きそうなイメージです。
しかしよく読むと「血行を促進する」「毛根に働きかける」といった文言はあっても、直接「毛を生やす」「発毛させる」作用が認められているとの説明は見当たりません。つまり、ゼロから毛髪を生やす科学的根拠のある成分が配合されているわけではないのです。
医師の立場から見ると、今は薄毛になっていないけれど将来の予防のために使う、というのであればよいかもしれませんが、すでに薄毛が進んでいる人、AGAを治したいと思っている人が望む効果を得るのは難しいといえます。
市販の医薬品は有効成分の配合濃度が低い
一方、「医薬品」とパッケージに記載されている発毛剤については、発毛の効果効能が認められているのは確かです。ただし、有効成分の配合濃度はクリニックで処方される外用薬よりも上限が低く抑えられています。ミノキシジルを例にあげると、クリニックの処方薬は15%が標準であるのに対し、市販の医薬品に配合されている濃度は5%。3倍もの開きがあるのです。
したがって、ごく初期で他人からはまだほとんど気づかれない程度の薄毛であれば、市販の医薬品で様子を見るのもありかもしれませんが、進行したAGAで期待どおりの効果を得ることは難しいと考えます。
刺激がある=効くわけではない!
なお、育毛剤にしろシャンプーにしろ、スーッとするような刺激が強いものも少なくありません。清涼感があるのでつけた瞬間は気持ちがよいかもしれませんが、人によってかぶれのもとになることもあるので注意が必要です。専門的には接触性皮膚炎といって、ひどくなると皮膚科で治療をしなければならなくなります。
育毛剤もシャンプーと同様、使用感や香りが気に入って使う分には個人の好みの問題ですので否定はしません。しかし、これさえつければ髪が生えてくるとの過度な期待をするのは考えものです。まして肌に合わない場合は、刺激が強い製品をそのまま我慢して使い続けるのはやめておきましょう。皮膚にダメージを与え、かえって毛髪が生えにくくなってしまいかねません。
医療機関での治療なら、効果と安全面の両方をクリア
市販の育毛剤や養毛剤を使い続けるよりも、クリニックで医師の的確な診断のもと、自身の抜け毛の状態、AGAの進行に合った薬剤を使って治療するほうが、早くかつ確度の高い効果に結びつくといえます。医療機関なら、治療効果だけでなく頭皮や毛髪の状態も定期的に診察で確認してもらえるので、皮膚トラブルなどの副反応にも迅速に対応できるなど、安全面の配慮がされるのも大きなメリットです。
髪によいサプリの効果は?
最近は、髪によいとうたうサプリメントもドラッグストアやネット通販などでよく見かけるようになりました。体の中からのアプローチは有効なのでしょうか。
サプリメントは薬ではなく、食品の位置づけ
サプリメントはタブレットやカプセルといった、一見薬のような形状のものが多いこともあり、飲み続けると効きそうなイメージをもっている人もいるかもしれません。
しかし、サプリメントはいわゆる栄養補助食品。薬ではなく、食品の分類に入ります。サプリメントにしろ、普段の食事にしろ、もしそれで毛が生えてくるのなら、とっくに医薬品になっていることでしょう。そうでない以上、サプリメントを飲むだけで毛が生えてくるとは残念ながらいえないのです。
栄養は大事だが、発毛にはやはり薬による治療が必要
確かに、体に必要な栄養が不足すると抜け毛が起こりやすくなるのは事実です。したがって、当院でもAGA治療の際、栄養の偏りや不足が見られる人にはサプリメントを提案することがあります。
しかしその目的としては、主に毛髪の血行を促し抜け毛を予防することと、生えてきた毛が血液から栄養をきちんと受け取って順調に伸びる手助けをするためであり、栄養を補給するだけで発毛するかといえば、それは難しいといわざるを得ません。
やはり、AGAを治したい、薄毛を解決したい、と思うのであれば、クリニックで的確な診断を受け、自分に合った治療を行うのが一番の近道です。サプリはそれをサポートする位置づけととらえましょう。
まとめ
ヘアケアやサプリメントなど製品を用いたセルフケアは、将来の予防の手段の1つとして使うのであれば有用と考えられますが、すでに抜け毛が増え、薄毛が進行して気になっている人や、AGAを治したいと思っている人の場合、これらに頼っても発毛の手ごたえを得るのは難しいといえます。最も効率よく、安全に、納得のいく効果を得るには、クリニックで自分の薄毛の状態に合った治療を継続して受けることがベストと言えるでしょう。

