COLUMN AGA以外の薄毛・脱毛症
【医師監修】コロナ後遺症ではげる人が急増中?脱毛が生じる理由と対策を解説

新型コロナウイルス感染症(以下コロナと記載するものは新型コロナウイルス、COVID-19を指します)の流行から数年が経過し、感染後及びワクチン接種後の抜け毛に関するご相談は今もなお増え続けています。
いわゆる「コロナ抜け毛」の実態については厚生労働省も調査を進めていますが、はっきりとした原因は明らかにされていません。
一方、海外の研究ではAGAや円形脱毛症、休止期脱毛症などさまざまな脱毛症との関連性が実証されています。
「コロナ感染後の脱毛が止まらない」
「ワクチン接種後に抜け毛が増えるって本当?」
このような不安を解消していただくため、本記事ではコロナ抜け毛に関する最新の情報をまとめました。
目次
コロナ後遺症として脱毛が報告されている

国立国際医療研究センター(以下、NCGM)は2021年10月、コロナ罹患後の患者を対象としたアンケート調査※の結果を報告しました。
コロナの遷延症状の一つに脱毛が報告されており、発熱やのどの痛みなどの主症状が回復したあとも抜け毛に悩まされる方は多いようです。
※実施期間:2020年2月〜2021年3月
回答者数:457名
参考:新型コロナウイルス感染症罹患後の遷延症状の記述疫学とその出現・遷延リスク因子に関する報告|国立国際医療研究センター
約4人に1人が何らかの症状を訴えている

NCGMが実施したアンケート調査によると、コロナ発症から6ヶ月以内に何らかの症状が発現したと回答した人は120人(26.3%)にのぼりました。
急性期から遷延する症状、及びコロナ回復後に出現すると報告のあった症状には次のものがあります。
- 倦怠感
- 味覚・嗅覚障害
- 咳
- 呼吸困難
- 脱毛
- 集中力低下
- 記銘力障害
- うつ
本調査の回答者の多くは軽症者※でしたが、コロナ後遺症に悩まされる人の割合が高いことに驚かされます。
※コロナ治療で酸素投与を必要としない患者
コロナ後遺症は女性に多い傾向にある

倦怠感や味覚障害、脱毛といったコロナ後遺症は以下に該当する方に多く認められることがわかっています。
- 女性
- 若年者
- 痩せ型
コロナ感染後の脱毛は、小さな子どもさんにも認められることがあります。なぜ女性や若い方に多く出現するのか、またどうすれば改善するかは明らかにされていません。
同調査とは別の研究ですが、ワクチンを2回接種していた人はそうでない人に比べて症状が長引きにくいという結果が報告されています。
ワクチンによる遷延症状の予防効果については引き続き研究が進められているところであり、今後の調査に期待したいところです。
参照:(5)Antonelli M, et al. Risk factors and disease profile of post-vaccination SARS-CoV-2 infection in UK users of the COVID Symptom Study app: a prospective, community-based, nested, case-control study. Lancet Infect
休止期脱毛症や円形脱毛症を発症する場合もある
海外の研究では、コロナ後遺症で休止期脱毛症を発症したケースも報告されています。
休止期脱毛症とは、成長過程にあった毛髪が何らかの原因により休止期に入ることで引き起こされる脱毛症です。
コロナ感染後の休止期脱毛症は、コロナウイルス感染による炎症によって引き起こされる細胞間伝達物質の異常(サイトカインストーム)によって引き起こされる可能性が高いと考えられています。
円形脱毛症は自己免疫により引き起こされる脱毛症で、新型コロナウイルス感染後に円形脱毛症の既往歴がある方の再発がみられたというデータがあります。
ウイルス感染が酸化ストレスを引き起こし、自己免疫異常から円形脱毛症が再発するとの見方があるようです。
なお、コロナと脱毛症を関連づけるメカニズムは完全には明らかにされていません。現時点では、ウイルス感染によるサイトカインストームや免疫機能に異常が生じているとの考え方が有力視されています。
参照:Alopecia in patients with COVID-19: A systematic review and meta-analysis
Betty Nguyen, BS and Antonella Tosti, MD
コロナ感染後に抜け毛が増える理由

コロナ抜け毛の原因については研究が進められている段階ですが、これまでの研究では遺伝子や環境的要因が相互に作用し合って生じると考えられています。
コロナに限らずですが、病気になると食欲が落ちたり運動不足になったりします。髪は日々の食事から取り入れた栄養を元に成長するので、食事量が減ると髪に十分な栄養が行き渡りません。
療養中は運動量も減り、血流も滞りやすいです。血行不良は髪の成長に悪影響を及ぼすため、結果として抜け毛が増加するものと考えられます。
また、思うように体調が回復しないストレスも抜け毛を招く原因の一つです。長引く自粛生活も相まって、ストレスが抜け毛となって表面化している可能性は否定できないでしょう。
コロナワクチン接種後にも抜け毛が増える場合がある

コロナワクチンの接種後に抜け毛の増加を訴える方もいます。
ワクチン接種の目的は、外部から侵入しようとする病原体に備え、身体に免疫を作ることです。
ワクチンには感染症の原因となる細菌やウイルスの病原性を弱めたものが含まれるため、自然感染した時と同じように何かしらの症状(副反応)が認められる場合があります。
ワクチン接種後の抜け毛については、当院にも多数のご相談が寄せられます。副反応は時間の経過とともに落ち着くケースがほとんどですが、不安があれば一度医師に相談してみるのがいいでしょう。
オミクロン株に感染すると抜け毛が増えやすい?
コロナ後遺症による脱毛症状は、オミクロン株よりもデルタ株以前の変異種に感染した方に多く認められるというデータが報告されています。
オミクロン株では、咳嗽(がいそう)が38.6%と最も高い割合で、デルタ株以前から16.4%上昇している。次いで「倦怠感」が34.0%と高い割合となっており、デルタ株以前から8.0%上昇している。一方、「味覚障害」「嗅覚障害」「脱毛」は、デルタ株以前から大きく減少している。
引用元:都立・公社病院「コロナ後遺症相談窓口」の相談データ分析|東京都福祉保健局の調査
ウイルスはヒトや動物の体内に侵入し、生物の細胞分裂に便乗して増殖を繰り返します。遺伝子が複製される時にしばしばコピーミスが生じるのですが、この現象を「変異」と言います。
ウイルスが変異すると感染率や症状、重症化リスクなども変化するため、感染したウイルスの系統によって後遺症の現れ方も変わってくるのです。
コロナ抜け毛を治す方法

コロナ抜け毛を確実に抑える方法は確立していませんが、従来の脱毛症治療がコロナ抜け毛に有効な場合があります。
以下はコロナ抜け毛に対して行われる治療法の一部※です。
- ミノキシジル外用薬
- メソセラピー(注入療法)
- パントガールなど
コロナ感染後は身体に負担がかかり、栄養不足や血行不良に陥りやすいです。自粛生活や治療によるストレスが重なれば、仮にコロナ以外の病気であっても抜け毛が増える条件は十分に揃っています。
直接的な原因は解明されていませんが、生活習慣の改善とストレス解消でも抜け毛の予防効果が期待できるでしょう。
※コロナ抜け毛の改善を保証するものではありません。
コロナ後遺症による脱毛は医療機関に相談を

コロナの主症状が回復しても、遷延症状に苦しむ患者様は大勢います。
未知のウイルスとの戦いはこの先も長引くことが予想され、世界中の研究者が治療薬の開発に取り組んでいます。コロナ抜け毛についても原因究明の調査が行われていますが、治療法が確立するまでにはもう少し時間がかかるでしょう。
コロナ感染やワクチン接種後の抜け毛については、従来の治療法で改善できる場合があります。
コロナ抜け毛に関するお悩みは、薄毛治療が受けられる医療機関に相談するのも一つの方法です。当院では薄毛治療の実績が1万人を超える医師が、専任で治療を行います。
一人ひとりの症状に合わせて最適な方法をご提案しますので、抜け毛や薄毛のお悩みはお気軽にお問い合わせください。

