COLUMN AGA治療の種類

ザガーロの成分デュタステリドの効果は?フィナステリドとの違い、副作用は?AGA男性型脱毛症治療薬

公開日:2022/09/18

更新日:2022/12/05

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デュタステリドとは、ザガーロに代表される男性型脱毛症(AGA)治療薬の総称のことです。本来は、前立腺肥大症を治療するために開発された薬ですが、日本や韓国ではAGA治療にも用いられています。

同じくAGA治療薬として使われるフィナステリド(プロペシア)も、元々は前立腺肥大症の治療薬ですが、この2種類の薬は何が異なるのでしょうか。

この記事では、ザガーロに代表されるデュタステリドとはどんな薬なのかについて詳しく説明していきます。

ザガーロに代表されるAGA治療薬デュタステリドとは

デュタステリドは、日本と韓国において使用されている、AGAと呼ばれる男性型脱毛症の治療薬です。この2ヶ国以外では、前立腺肥大症の治療薬として使用されています。

元々、日本でもアボルブの製品名で販売されていましたが、AGAの治療薬として承認されたことを契機にザガーロ(製品名)として販売が開始されました。

AGA以外の、たとえば円形脱毛症などに関しては効果はありません。これは、この薬が男性ホルモンに関わる作用を阻害するからであり、当然、女性が服用することは禁忌とされています。

プロペシアに代表されるフィナステリドとの違い

ザガーロに代表されるデュタステリドは、プロペシアに代表されるフィナステリドと似た、どちらもAGAの治療薬。

元々は前立腺肥大症のために開発されたということも共通いている薬です。ここからは、この2種類の薬を比較しながら違いをご説明していきます。

※AGA治療薬フィナステリドに関して詳しくはコラム「プロペシアの成分・フィナステリドの効果、推奨用量、副作用、子作りへの影響について【AGA治療薬】」をご参照ください。

実は効果も効能も異なる

同じ病気の治療に使われるものの、実はこの2つの薬には大きな違いがあります。

それはデュタステリド(ザガーロ)がAGAの症状を改善させるための働きを持つのに対し、フィナステリド(プロペシア)は、AGAの症状の進行を抑える働きを持つことです。

もう少し詳しく説明すると、デュタステリド(ザガーロ)のほうは症状が悪化しないようにしながら薄毛の症状を改善していくシステム。フィナステリド(プロペシア)のほうは症状の進行を防ぎながら、ヘアサイクルを元に戻していくシステム。このような感じになるでしょう。

効果を感じられる期間も異なる

デュタステリド(ザガーロ)とフィナステリド(プロペシア)は、服用を開始してから効果を感じられるまでの期間も異なります。

前者の場合は、服用を開始してから、早い方でも半年から1年ほど経過してから、なんらかの効果や違いを感じられるようになります。

一方、後者の場合は早い人なら3ヶ月ほどで違いを感じられる場合があります。このように効果を感じられるまでの期間が異なるのは、「薬が異なるから」という理由だけで違いが生まれるのではなく、髪の毛の一生ともいわれるヘアサイクルが大きく関係しています。

どちらの薬を服用したとしても、ヘアサイクルが通常の働きに戻らなければ効果を実感することはできません。ヘアサイクルは、2~6年ほどもある成長期、2週間程度の退行期、そして3~4ヶ月ほど続く休止期により構成されています。

特に成長期は時間も長く、新しい髪の毛が生まれ始めます。髪の毛の成長する準備が整っても、ヘアサイクルの状況次第では、効果が実感できるまでに長い時間を要します。そのため、効果が出ないからといってすぐに諦めるのではなく、根気よく薬を飲み続けることが大切です。

成分的な特徴も異なる

デュタステリド(ザガーロ)とフィナステリド(プロペシア)は、成分的な特徴も異なります。前者に含まれる成分は頭全体に作用するのに対し、後者に含まれる成分は前頭部と頭頂部にのみ作用します。

AGAを引き起こす主な原因はⅠ型とⅡ型の「5-α還元酵素」だとされていて、前者は両方に効果があるものの、後者はⅡ型にしか働かない、というところが大きな違いだといえるでしょう。

髪の毛のボリューム

ザガーロに代表されるデュタステリドと、プロペシアに代表されるフィナステリドを投与の約半年後、その頭皮に含まれるAGAの原因因子のひとつ「DHT(ジヒドロテストステロン)」の濃度を比較する試験が行われています。

これによると、前者が投与された患者は、後者が投与された患者の約1.6倍の「頭頂部の毛髪の数」「毛髪の太さ」「硬毛の本数」を持っていました。これは前者のほうがDHTを後者よりも阻害していたことを意味しています。

以上のことからわかるとおり、デュタステリドは、フィナステリドよりもAGAに対しては優れた効果を持っています。

AGAの治療では、DHT(ジヒドロテストステロン)を制御することと、5-α還元酵素の活動を邪魔することが肝です。これにより抜け毛の発生を抑え、発毛へとつなげることが可能になります。

ここまでご紹介してきたことを考慮すると、デュタステリドは、「なるべく早く治療したい」「フィナステリドで効果があまり感じられない」「症状が重い」「生え際に症状が出ている」といった場合に効果的だと考えられます。

デュタステリドの詳しい効果と作用

フィナステリドがAGAの進行を抑える薬であるのに対し、デュタステリドは、AGAを治療する薬です。微妙にも思える違いですが、ここまでにご紹介してきたとおり、デュタステリドのほうが、より優れた抗AGA効果を持っているといっていいでしょう。

AGAを治療する際に重要なのは、DHT(ジヒドロテストステロン)をコントロールすることだということはすでにお話ししましたが、その原料となるテストステロンからDHTを作り出すのは5-α還元酵素です。

すでにご紹介したように、Ⅰ型とⅡ型の5-α還元酵素のほか、Ⅲ型のものもあり、DHTは3通りの道のりで作られていることになります。AGA治療薬は、この道のりを阻害することが役割です。

Ⅰ型5-α還元酵素は、脂っぽい頭皮の方に見られることが多く、頭では側頭部や後頭部に、また身体全体にある毛乳頭細胞の中にも含まれています。

Ⅱ型5-α還元酵素は、全体的に体毛が濃い方に見られることが多く、前頭部と頭頂部に多く含まれています。

AGAの症状は、多くの場合はこれらの部位を中心に進行していきますので、ここから考えても、Ⅱ型5-α還元酵素の働きを阻害することが症状の改善につなげやすいということがわかっていただけるでしょう。

デュタステリドは、Ⅰ型とⅡ型の5-α還元酵素の道のりを阻害することができます。もう一方のフィナステリド(プロペシア)は、Ⅱ型5-α還元酵素の道のりのみに効果的です。

AGAの治療は、これら2つの経口薬のほかに、外用薬のミノキシジルを併用する場合があります。ミノキシジルは、市販の発毛剤にも含まれていることの多い成分です。ミノキシジルには血流や毛頭細胞の働きをよくする効果があります。

デュタステリドを1年間継続使用した場合、前頭部、頭頂部ともに、8割以上の有効率を示しています。フィナステリドの有効率は6割ほどです。

デュタステリドは、フィナステリド(プロペシア)を服用していて特定の箇所(特に前頭部)における発毛にお悩みの方にとっては、非常に有効な薬になる可能性があります。

もちろん、8割という数値からもわかるとおり、AGAに悩むすべての方の症状改善は達成されておらず、このような場合は、現時点では長期間、治療を続けるしかありません。

すでに毛根自体が働きを失っているため、服用を続けても発毛へとつなげることができないのです。そう考えると、AGAは早期の治療が大変重要なことがわかります。

AGAは現状、保険が適用されない治療となります。そのため、治療費の相場やクリニック・病院の評判などを参考にしたうえで、実際にかかる医療機関を選ぶといいでしょう。

デュタステリドの服用方法と容量

容量:0.1mg、0.5mg

服用方法:1日1カプセル

ザガーロに代表されるデュタステリドは、他の薬同様、医師の処方どおりに服用することが絶対条件となります。一般的には1日当たり1カプセルの場合が多く、服用の時間帯に特に決まりはありません。

ただし、確実に治療の効果を出すためには、毎日定時に服用したほうがよいでしょう。すでに少し触れましたが、効果を感じられるまでにかかる時間は6ヶ月程度。

人によっては1年ほどかかる場合もあります。AGAの治療にはヘアサイクルが大きく関係しますので、短期の服用で結果を得ることはできません。

禁忌(薬を使用してはいけない方)

デュタステリドは、使用においては細心の注意を払う必要があります。

まず、デュタステリド(ザガーロ)は、男性ホルモンに対して作用する5-α還元酵素を阻害する薬なので、女性や子供が服用することはできません。

また、肝機能に影響を与えるおそれがあるため、肝機能障害をお持ちの方も服用することができません。これらの禁忌は、フィナステリドも同様です。

これらの薬は皮膚からも吸収されるため、たとえば女性が薬のかけらを素手で拾うようなことは絶対に避けてください。

これらの薬には、まれに副作用が出る場合があります。副作用については、後ほど詳しくご説明します。

AGAの治療に直結するヘアサイクルについて

AGAは、ヘアサイクルが阻害されることにより発症します。

このヘアサイクルを理解すると、AGAがなぜ起こるのか、そしてデュタステリド(ザガーロ)やフィナステリド(プロペシア)がどのように効くのかがわかりやすくなります。ここからはかんたんにヘアサイクルについてご説明します。

ヘアサイクル

ヘアサイクルは、毛周期とも呼ばれる、いわば髪の毛の一生です。普通、髪の毛は2~6年ほどの周期で生まれ変わります。さまざまなステージ分けがあるのですが、大きく分けると「成長期」「退行期」「休止期」という3ステージとなります。

ヘアサイクルのほとんどの時間は実は成長期で、全サイクルの8~9割ほどがこれに当たります。

残りの1~2割ほどの時間が髪の毛を作る活動が弱まる、もしくは停止する時期で、この間に古い髪の毛は抜けていきます。このヘアサイクルは、人により長さが異なります。

ヘアサイクルの乱れがAGAの原因になる

AGAを発症する原因はさまざまですが、多くの現代人が抱えている運動不足や飲酒、喫煙などの生活習慣、ストレスの多いライフスタイルなどを原因とする場合が多いと考えられています。

髪の毛の健康には頭皮の血流が関わっているため、不規則な生活や飲酒、喫煙が影響する可能性は非常に高いでしょう。

AGAを発症すると、ヘアサイクルは長くて1年、短い場合は数ヶ月ほどにまで短くなってしまいます。髪の毛が成長する期間が失われてしまい、軟毛化して抜けやすい髪質になります。

髪の毛は、日ざしの強い夏場にダメージを受けやすくなります。夏場から秋にかけての数ヶ月間が抜け毛が増えやすいシーズンです。

これは自然なことなのでそれほど気にすることはありませんが、夏場の頭皮ケアに問題があると、AGAにつながる可能性は否定できませんので、毎日、ていねいにシャンプーすると同時に、軽い運動などを習慣づけて、ストレスを発散するよう心がけましょう。

デュタステリドの副作用について

割合としては少ないのですがデュタステリドの副作用の報告もあります。

5-α還元酵素の阻害薬でよく発生するといわれる副作用に、性欲の減退や性機能不全などが挙げられますが、これらの発生率は全体の1パーセント程度です。

そのほかに肝機能障害やアレルギー、黄疸、蕁麻疹、頭痛、乳房の女性化などが報告されています。

また、アメリカのFDAでは、デュタステリドに、悪性度の高い前立腺がんのリスクが高いとの警告を発しています。ただ、悪影響があるかどうかについてはっきりとわかっているわけではありません。

デュタステリドだけではなく、5-α還元酵素の働きを阻害する薬は、血清PSAの数値を下げることから、この数値を目安に行われることの多い前立腺がんの診断機会を失わせていることが懸念されているのです。

もしも5-α還元酵素阻害薬の服用中に前立腺がんにかかってしまった場合、このPSA数値が低いことで、早期の発見や治療を難しくする可能性があります。

そのほかのリスクとしては、糖尿病や高脂血症なども報告されていますが、これらについてもまだまだ検証が必要とされます。

ポストフィナステリドシンドローム

フィナステリド服用中止後も性機能の低下が継続する可能性があるというポストフィナステリドシンドロームですがデュタステリドでも同様の事象が起こる可能性がありますが、現在のところ詳しい事はわかっていません。

フィナステリド1mgでは服用中止後に回復が見られるという報告もあります)

デュタステリドの注意点

禁忌のところでも触れましたが、デュタステリドは、女性や子供には無関係なAGAの薬です。

女性、特に妊娠中や授乳中の女性が服用してしまうと、赤ちゃんの成長に悪影響を与える可能性があるので、女性は絶対に服用してはなりません。

また、この薬は皮膚を通しても吸収される薬ですので、女性や子供が素手で扱わないように気をつけることが大切です。もしも皮膚に付着してしまった場合は、すぐに石けんを使って水で洗い流します。

さらにデュタステリドを服用中の献血は避けてください。治療が終わり、服用をやめても、その後半年間の献血は不可です。

特に禁忌とされているほかの薬剤はありませんが、注意する必要のある薬は存在するので、現在、服用している薬については医師に必ず報告する必要があります。

デュタステリドは耐性がつく?

耐性(薬剤耐性)とは、自分に対する薬の作用に対して抵抗する力がついてしまい、薬が効きにくくなる、もしくは効かなくなることを指します。

細菌やウイルスなどによる疾患を治療する際に抗生物質などを投与しても、それが効きにくい、もしくは効かないような状況のことです。耐性は、人間だけではなく、動物についてしまうこともあります。

デュタステリドは、長期の服用が想定されている薬です。

AGAというヘアサイクルに関わる疾患の治療薬でもあり、効果を感じられるまでには少なくとも3ヶ月程度はかかるため、中には「耐性」を疑う方もいらっしゃるようですが、このような根拠はまったくありません。

まれにフィナステリドを長期間服用している方で、薬の効果が見られずに新たに脱毛が始まるケースがありますが、これも実際に耐性なのかどうかは微妙なところです。

現状では耐性がつくという心配をするのではなく、毎日、確実に服用することが大切であり、効果が感じられないからといって服用を止めてしまうほうが、よほど大きな問題だといえるでしょう。

デュタステリドの効果やフィナステリド(プロペシア)との違い、作用する仕組みや注意点などについてご紹介しました。この薬はAGAの治療薬として安全性も高くとても有用です。

AGAにお悩みの方の救世主だといえるでしょう。AGAが手遅れな状態になる前に早期での治療をおすすめします。

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ベアAGAクリニック院長 清水 崇裕 Takahiro Shimizu

ベアAGAクリニック院長 清水 崇裕 Takahiro Shimizu

【経歴】東京医科大学卒業後、放射線科に入局し、放射線の専門医を取得。大手AGAクリニックで勤務医として約3年間診療現場で実践を重ね経験を積む。2020年2月、新宿三丁目駅の近くにベアAGAクリニック新宿院を開院。
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