「髪の毛が少なくなってきたけどもう手遅れなの?」 「AGAは進行型の脱毛症だからあきらめるしかない?」 そんなお悩みをお持ちではありませんでしょうか。
AGA(男性型脱毛症)は、男性の薄毛の大部分を占める脱毛症として知られています。発症すると薄毛がゆっくりと確実に進行するため、AGAを発症したらもう治らないとあきらめる方もいるようです。
ただAGAにおける手遅れの状態を、一般の方が正確に判断することは困難といえるでしょう。ここではAGAの発症メカニズムや手遅れな状態になる理由、手遅れな状態を未然に防ぐ方法について解説します。
目次
AGAにおける「手遅れ」な状態とは
AGAにおける「手遅れ」な状態としては、次の2点が挙げられます。
- 毛根が死滅し髪の毛が生えてこなくなった状態
- 頭皮が見えるほど広範囲に脱毛が広がっている状態
上記はあくまでも一般論であり、薄毛の状態が同じでも回復するかどうかには個人差があります。必ずしも全員に当てはまるわけではないことを理解しておいてください。
毛根が死滅し髪の毛が生えてこなくなった状態
AGAにおける手遅れな状態の1つが、毛根が死滅して、髪の毛が生えてこなくなった状態です。頭皮の外に見えている髪の毛が毛幹で、皮膚の下にある部分を毛根と言います。
髪の毛は毛根の一番深い部分にある「毛球」の中で、毛母細胞が分裂することによって成長します。 仮に毛根が死滅した場合、毛母細胞の分裂が起こらなくなるため、その毛穴からは二度と髪の毛が生えてきません。
ただ毛根がいきなり死滅することは滅多にありません。AGAを発症している方の場合、毛根が死滅しているのではなく、毛母細胞の分裂が極端に少なくなっている、もしくは毛母細胞が休眠している可能性が考えられます。
頭皮が見えるほど広範囲に脱毛が広がっている状態
AGAにおける手遅れな状態としては、頭皮が見えるほど広範囲に脱毛が広がっている状態も挙げられます。AGAの初期段階では、薄毛の範囲がそれほど広がっていないだけでなく、髪の毛もまだそれほど細くなっていません。
そのため、AGA治療を開始した場合、早期回復が期待できます。 ところがAGAの症状が後期に入ると、薄毛の範囲が広がるだけでなく髪の毛自体も細く弱々しくなるため、頭皮が広範囲に渡って見えるようになります。
この段階になると、治療薬を服用しても中々効果が期待できません。また、自毛植毛をするにしても、株(グラフト)を採取することが困難となります。
AGAを発症するメカニズム
AGAを発症するメカニズムを知るためには、ヘアサイクルと抜け毛の原因について理解する必要があります。ヘアサイクルは髪の毛が生えて成長し、抜け落ちるまでの周期です。ヘアサイクルはおよそ2~5年(女性の場合は3~6年)周期で繰り返しており、その大半を髪の毛の成長期が占めます。
髪の毛は成長期を終えると退行期および休止期に移行し、やがて毛穴から抜け落ちます。AGAを発症するのは、髪の毛の成長期が何らかの原因で短縮されるためです。
髪の毛の成長期が短縮される理由の1つが、脱毛因子を放出するジヒドロテストステロン(DHT)が作られることです。 ジヒドロテストステロンは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが5αリダクターゼと結びつくことで変換されます。
ジヒドロテストステロンが、男性ホルモン受容器であるアンドロゲンレセプターと結合すると、TGF-βと呼ばれるサイトカインを産生します。 TGF-βは脱毛因子や退行期誘発因子と呼ばれており、正常なヘアサイクルを乱し、髪の毛の成長期を短縮させます。
ヘアサイクルは髪の毛1本1本ごとに異なりますが、脱毛因子によって成長期を短縮された髪の毛が増えることで、徐々に薄毛が進行します。この一連の流れがAGAを発症するメカニズムです。
AGAが手遅れな状態になる理由
AGAが手遅れな状態になる理由として、次の3点が挙げられます。
- AGAの治療を開始する時期が遅いため
- AGAが進行性の脱毛症であるため
- 現代のAGA治療薬が全ての人に万能な効果を発揮するわけではないため
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
AGAの治療を開始する時期が遅いため
AGAが手遅れな状態になる理由の1つが、AGAの治療を開始する時期が遅いためです。基本的にAGAの治療は、薄毛の範囲が広ければ広いほど、効果が出るまでに時間が掛かるものです。
また若い方に比べると年齢を重ねた方の場合、治療効果があらわれるまでに一定の期間が必要となります。AGA治療を始めたのにすぐに効果が見られないと、治療の継続を中断する方もいるでしょう。その間にも薄毛の範囲は広がるため、AGAが手遅れな状態になるリスクがさらに高くなります。
AGAが進行性の脱毛症であるため
AGAが手遅れな状態になる理由として、AGAが進行性の脱毛症である点もあげられます。日本皮膚科が策定する男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインによると、AGAは次のように定義されています。
男性型脱毛症(male pattern hair loss,androgenetic alopecia)は思春期以降に始まり徐々に進行する脱毛症である
引用元:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
AGAは進行型の脱毛症なので、発症が疑われるのに何ら対策をしなかった場合、薄毛が緩やかにですが確実に進行します。AGAは急激に進行することはありませんが、気が付いたら手遅れな状態になりやすく、「AGAを発症した段階で終わり」だと考えられる理由の一つにもなります。
現代のAGA治療薬が全ての人に万能な効果を発揮するわけではないため
現代のAGA治療薬が、全ての薄毛に対して万能な効果を発揮するわけではない点も、AGAが手遅れな状態になる理由の1つです。AGAの治療には、主に以下の3つの治療薬が用いられます。
治療薬 | 効果 | 副作用 |
フィナステリド錠 |
AGAによる抜け毛の原因となるジヒドロテストステロンの生成を抑制。抜け毛を予防する。 |
男性の性的な機能を減退させる(性欲の減少など)。 |
デュタステリド錠 | フィナステリドと同様の作用だが、3倍の効果が期待されている。 | 男性の性的機能を減退させる(射精障害など)。 |
ミノキシジル外用薬 | 血管を拡張して血流をスムーズにする。発毛シグナルを促進し、毛母細胞の死滅を抑制。 | 頭皮のかゆみやかぶれ、アレルギー反応など。初期脱毛の脱毛量が多い場合がある。 |
AGA治療薬には上記の効果が期待されていますが、効果が出ないAGAも存在しています。そのためフィナステリド錠の添付文書には、6ヶ月使用したとしても、改善しない可能性もある旨が記載されています。
参考:フィナステリドの服用をやめたらどうなるのか解説
AGAの進行ステージをもとに手遅れかどうかの自己判断は難しい
AGAは進行型の脱毛症ですが、症状が進行するスピードは人によってさまざまです。AGAの進行ステージに関しては、ハミルトン・ノーウッド分類と呼ばれる指標がよく知られています。
日本では皮膚科医の高島巌先生が、ハミルトン・ノーウッド分類をさらに細かく分類し、以下の13パターンに分けています。
Ⅰ型 | 見た目では薄毛に気づきにくい、もっとも初期の段階 |
Ⅱ型 | 見た目で薄毛を実感し始める段階。額の生え際から薄くなってくる |
Ⅱvertex型 | 額の生え際が薄くなるの加え、頭頂部にも狭い範囲で薄毛が見られる |
Ⅱa型 | 額の生え際がやや後退した状態 |
Ⅲ型 | 額が後退し髪の毛全体のボリュームが減少し始める |
Ⅲvertex型 | 額の後退が進行し頭頂部の薄毛も範囲が広がり始める。Ⅳ型の前段階 |
Ⅲa型 | 額の生え際の両サイドが後退し始める。M字ハゲ |
Ⅳ型 | M字ハゲがさらに進行した状態、頭頂部にもはっきりとした薄毛が認められる |
Ⅳa型 | 額の生え際が大きく後退するが頭頂部の髪の毛はまだ残っている状態 |
Ⅴ型 | 前頭部からの薄毛と頭頂部の薄毛がつながる前段階 |
Ⅴa型 | 前頭部の薄毛が頭頂部の薄毛につながった状態。髪の毛はまばらに残っている |
Ⅵ型 | 前頭部からの薄毛と頭頂部の薄毛がつながり、後頭部と側頭部に髪の毛が残っている状態 |
Ⅶ型 | 薄毛が進行し、もみあげ部分と襟足以外の髪の毛がなくなった状態 |
AGAの進行段階は大きく分けると上の表のように分類されます。ただし、髪の毛が抜け落ちているからと言って、毛根が死滅しているとは限りません。
そのため、ハミルトン・ノーウッド分類だけでAGAが手遅れな状態になっているのかどうか、自己判断するのは難しいでしょう。薄毛の範囲が広がっているからと諦めるのではなく、まずは専門医に相談することが重要です。
AGAの手遅れな状態を事前に防ぐには
AGAの手遅れな状態を事前に防ぐには、次のような点に気を付ける必要があります。
- AGAの発症初期からクリニックで治療を開始する
- AGA治療を自己判断で中断しない
- 自分に合ったAGA治療薬や治療法を探す
それぞれについて解説します。
AGAの発症初期からクリニックで治療を開始する
AGAの手遅れな状態を事前に防ぐには、AGAの発症初期からクリニックで治療を開始することが重要です。AGAの進行パターンの中でもⅠ型やⅡ型などAGAの初期であれば、適切な治療を受けることでAGAの進行を高い確率で回避する結果が期待できるでしょう。
AGAがⅢ型に進行した場合、改善するにはできるだけ速やかな治療が求められます。Ⅳ型以降になると治療効果があらわれるまでに時間が掛かり、場合によっては手遅れの状態になる可能性もあります。 進行型の脱毛症であるAGAが完治することは基本的にありません。
だからこそ、AGAの進行速度を遅らせ髪の毛の本数を維持することが重要です。AGAの初期からクリニックで治療を開始すれば、手遅れな状態を防ぐことができます。
AGA治療を自分の判断で中断しない
AGAの手遅れな状態を事前に防ぐには、AGA治療を自分の判断で中断しないことも求められます。AGAの手遅れの状態になった方の中には、「思ったほどの治療効果が得られない」「副作用が心配」などの理由で、自己判断でAGA治療薬の服用をやめる方も多く、後に後悔する原因にもなります。
しかし、髪の毛が生え替わる周期には個人差があり、治療を始めたからと言ってすぐに髪の毛が生えてくる訳ではありません。医療機関でも最低6ヶ月は治療を続けて様子を見るよう推奨しています。AGA治療の副作用が心配な方は、自分の判断で服用を中止するのではなく担当の医師に相談するよう心がけましょう。AGAを自力で治そうとすることもおすすめできません。
自分に合ったAGA治療薬や治療法を探す
自分に合ったAGA治療薬や治療法を探すことも、AGAの手遅れな状態を事前に防ぐために重要なポイントです。AGA自体は遺伝的な要因で発症するケースが多く、その場合にはフィナステリド錠などで抜け毛を予防しつつ、ミノキシジル外用薬で発毛を促進するのが効果的です。
ただ抜け毛の原因は遺伝だけではありません。乱れた生活習慣や栄養バランスの偏った食事、睡眠不足、疲労の蓄積、ストレスなどさまざまな要因が複雑に絡み合い、結果として抜け毛を引き起こします。そのため、医療機関で自分に合った治療薬および治療法を探すことが重要です。
参考:ミノキシジルの副作用と効果について解説
AGAの進行が手遅れになった場合は諦めるべきか
AGAの進行が手遅れになった場合、治療は諦めるべきではありません。 AGAが進行して薄毛の範囲が広がると、「毛根が死んでしまったから髪の毛はもう生えてこない」と諦める方もいます。ただ、日本人の髪の毛は平均すると10万本あるとされており、すべての毛根が死滅することは考えにくいです。
AGAを発症しても毛根がいきなり死滅するようなケースはむしろ少数例で、多くの場合では毛根が休眠状態になっていると考えられます。とはいうものの、毛根の休眠状態が続くと、いずれ毛根の死滅につながるため注意が必要です。
AGAの進行が手遅れになったと感じる場合であっても、専門医が見れば十分に改善が期待できるケースもあります。治療薬での改善が難しければ、自毛植毛をする方法もあります。自分の判断で手遅れになったとあきらめるのではなく、まずは専門の医師に相談しましょう。
AGAの進行が手遅れになる前にベアAGAクリニックへご相談ください
AGAは進行型の脱毛症のため、発症が疑われる場合になにも対策を講じなければ、薄毛の範囲がゆっくりと徐々に広がります。薄毛の範囲が狭いうちであれば治療に高い効果を期待できますが、ある程度AGAが進行した場合、治療効果を実感できるまである程度の時間が掛かるでしょう。
薄毛の進行ステージにはハミルトン・ノーウッド分類と呼ばれる指標がありますが、あくまでも見た目上の判断基準であり、進行したからと言って絶対に回復不可能という訳ではありません。 ベアAGAクリニックでは投薬治療だけでなく、髪の毛の成長因子(グロースファクター)を頭皮下に注入する治療法や低出力レーザーなど、1人1人に最適な方法で薄毛の改善に取り組んでいます。来院が難しい方へはオンラインでのAGA治療もご案内しております。AGAが手遅れの状態になったと自分で判断する前に、まずは専門医までご相談下さい。

執筆者:清水崇裕(ベアAGAクリニック院長、医師、医学博士)
薄毛治療実績1万人以上。薄毛治療以外の医学知識も豊富で、安全に配慮した治療を心がけています。美肌、シミ、シワ等も含めトータルなエイジングケアをサポート致します。最近髪が細くなってきた、頭頂部が気になる、髪が⽔に濡れてボリュームが減るのが恐い、など薄⽑に対するどんなお悩みでもお気軽にご相談ください。患者様の期待に応え、当院で治療を受けてよかったと⾔っていただけるようなクリニックを⽬指して参ります。
資格:医師・医学博士・放射線科専⾨医・⽇本医師会認定産業医・⽇本抗加齢医学会会員・⽇本医学放射線学会会員
薄毛にお悩みの方は必ずお力になります。ベアAGAクリニックにご相談ください。
ベアAGAクリニック院長 清水崇裕
参考:皮膚科とAGAクリニックで受けられるAGA治療法・費用面の違いについて解説