COLUMN FAGAの基礎知識

女性の薄毛(FPHL、FAGA)はなぜ起こる? 問題点・原因・特徴・効果的治療法を解説

公開日:2022/09/17

更新日:2022/09/20

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女性型脱毛(FAGA、FPHL)は、比較的よく見られる脱毛症です。女性型脱毛は、びまん性脱毛症(頭部全体に起きる薄毛)が生じるという特徴があり、精神的、社会的苦痛の原因となります。

以前は薄毛といえば男性の症状という社会的認識があったため、FAGA・FPHLの女性は人知れず悩むだけで、治療を受ける人は多くありませんでした。

ただ、近年、FAGA(女性男性型脱毛症)の呼称をはじめ、女性の薄毛という症状の知名度はかなり高まったようです。

東京・新宿にある当クリニックにも、近隣の歌舞伎町で働く女性や西新宿のOLさんなど、多くの患者さんが日々、FAGA治療の相談にいらっしゃっています。

今回の記事ではFPHLが患者さんにもたらす社会的・精神的問題点や症状の原因、特徴を解説し、有効な治療を紹介しましょう。

FPHLは複合的要因の組み合わせで起こる

FPHLとは、前頭部および頭頂部において、頭皮から生える髪の毛の数が徐々に減少する進行性の薄毛です。

薄毛の発症には、毛を生やす機関である毛包のミニチュア化(小さくなること)が関係しています。

人間の髪の毛の太さは、毛包に覆われた毛乳頭そして毛母細胞の大きさで決まります。

したがって、毛包が小型化してしまうと、そこから生える毛が細くなってしまうのです。

その結果、薄毛という見た目の変化になって症状が表れます。

毛包が小さくなるきっかけは、現代医学では正確には解明されていません。今のところは、遺伝的素因や男性ホルモンの影響、環境的要因、および他のまだ解明されていない要因の組み合わせが原因だと推測されています。

また、FPHLの患者さんには、ヘアサイクルの乱れがみられます。毛が太く長くなるための成長期が短くなってしまうため、毛が正常に成長できません。

FAGAとFPHLの違い

女性の薄毛というとFPHLよりも「FAGA」という呼び方の方が身近に感じる人もいるかも知れません。

AGAクリニックが広告やウェブサイトなどで盛んに発信した結果、女性の薄毛に対してはFAGA(女性男性型脱毛症)という呼称が一般に定着しました。

しかし、女性型脱毛症の発症におけるアンドロゲンの役割が完全には証明されていないため、最近では”FPHL “という用語が使用されています。

FPHLの特徴

FPHLには、以下のような特徴があります。

  • 前頭部の毛髪の脱毛
  • 後頭部の毛髪は正常
  • 短く細い毛髪:薄毛部分の様々な長さと太さの毛髪が見られる
  • クリスマスツリーパターンのびまん性毛髪密度低下を伴う前頭部中央部の広がり

FPHLの一般的脱毛パターン

一般的な女性脱毛症のパターンは、前頭部の生え際の脱毛から始まって、前頭部の幅が広がり、全体のボリュームがダウンしていき、クリスマスツリー型の薄毛が目立つようになるというのが進行の仕方です。

もちろんその他のパターンも存在します。

女性型脱毛と全身の健康

さらに、抜け毛症状で怖いのは、単なる脱毛症ではなく、別の病気の症状である可能性も考えなくてはいけない点です。

脱毛症は見た目で分かりやすいため、患者さんは何らかの疾患(病気)や精神的疾患の最初の症状の1つとして、抜け毛に気づく場合があります。

たとえば、下記のような恐ろしい症状です。

  • 卵巣や副腎腫瘍
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
  • 副腎過形成などの高アンドロゲン症

上記疾患は、女性の急速な脱毛を引き起こす可能性があります。

AGA治療では薄毛を治療するだけでなく、深刻な疾患を原因とする薄毛でないかどうかを慎重に見極める必要があるのです。

症状発生の原因は?

FPHLの原因には、下記があげられます。

  • 加齢
  • 家族歴
  • 喫煙
  • 空腹時血糖値の上昇
  • 週に16時間以上の紫外線照射
  • ストレスや疲労

があります。

喫煙や紫外線に当たる頻度といった生活習慣に関わる要因は、患者さん自身で改めることが可能です。

薄毛になってしまったら、まずは生活習慣を改善するのがおすすめです。

FPHLにより起こる問題

FPHLを語るうえで無視できないのが、症状の発生で患者さんが深刻な精神的苦痛を受ける事実です。

女性薄毛は、多くの女性にとって苦痛のタネになっています。実は、女性の約49%が抜け毛に悩まされているといわれています。

男性にもまして女性は見た目を気にしますから、頭髪の問題はとても深刻なのです。

なお、ある調査では、女性の約40%が薄毛による夫婦間の問題を経験し、約64%が薄毛による社会的な問題を経験していると報告されています。

精神的な影響は大きい

FPHLは男性の脱毛症に比べて社会的な理解度がまだまだ低く、女性の患者さんにとっては大きな精神的苦痛となっています。

抜け毛を持つ女性の約70%が、不眠、罪悪感や社会的活動の制限と、否定的なボディイメージと自尊心の低下を経験していたという報告があり、女性にとってやはり薄毛は精神的な悩みにつながりやすいのです。

脱毛症を引き起こす可能性のある基礎疾患がないことを確認

さて、FPHLと診断されたらまず医師の診察で確認する必要があるのが、脱毛症を伴う基礎疾患の有無です。

前述した深刻な病気だけでなく、基礎疾患には鉄欠乏、感染症、甲状腺機能障害、栄養不足などが含まれます。

職業歴、有毒化学物質への曝露経験や摂取歴も確認が必要です。

仕事に伴ってさらされる環境が、薄毛の原因となっているケースがあるからです。

婦人科系病歴がないことを確認

ほかにも、婦人科系の基礎疾患が症状の原因となっている場合もあります。

婦人科系の基礎疾患である高アンドロゲン症、多嚢胞性卵巣症候群、腫瘍を除外するためには、詳細な婦人科の病歴の確認が必要です。

判断に必要な情報は、初潮年齢、月経周期の詳細、閉経の有無とその年齢、ホルモン避妊の使用、不妊の懸念、過去の婦人科手術の有無などです。

家族歴・遺伝

薄毛は遺伝する、というのが定説です。

患者の約54%が脱毛症の父方の親族を持ち、約21%が脱毛症の母方の親族を持っているという報告があります。

現在複数の遺伝子研究では、遺伝子が女性型脱毛症に関与している可能性も示唆されています。

ミノキシジルによる治療

さて、それではいよいよ、治療について述べていきます。

女性向け治療の基本は、AGA治療薬の処方によるものです。

よく使われるのは、ミノキシジルです。

ミノキシジルは元々、高血圧症のために経口的に使用される血管拡張剤でしたが、発毛作用が発見され治療に用いられるようになりました。

外用ミノキシジルは、1992年以来食品医薬品局(FDA)の承認を受けたFPHLの第一選択療法です。外用ミノキシジルでは、使用開始より多くの場合3ヶ月後に毛髪の増加が認められます。

治療を中止すると、臨床的には6ヶ月以内に毛髪は退行します。

脱毛症の程度は、治療がなかった場合に発生したであろうレベルに戻ります。

つまり、症状の改善後も継続的に治療が必要です。

スピロノラクトンによる治療

スピロノラクトンはアルドステロン受容体拮抗薬であり、利尿薬としても使用されている薬剤です。

アンドロゲン受容体の活性をブロックする成分が含まれ、薄毛を改善します。

スピロノラクトンの6ヶ月間の使用で、FPHLの90%の進行を阻止し、30%の毛髪密度を改善することが示されています。

一般的な副作用は嗜眠(眠くなる症状)と月経困難で、服用開始より3ヶ月後には改善します。

ミノキシジルとスピロノラクトンの併用療法と副作用

軽度から中等度のFPHLの100人の女性を対象とした研究において1日1回ミノキシジルとスピロノラクトンの経口投与を行った場合、6ヶ月と12ヶ月の時点で、抜け毛の重症度と抜け毛のスコアを改善させるのに有効であることが示されました。

この研究では、8人の患者に副作用が見られました。2人の患者には起立性低血圧があり、6人の患者には多毛症がありました。

2人の患者がじんま疹のためにミノキシジルの経口投与を中止しました。高カリウム血症または臨床検査機能異常の報告はありませんでした。

このようにミノキシジル、スピロノラクトン併用療法は薄毛治療のための発毛効果が認められています。

また、副作用は軽微で頻度も低いです。

5-α還元酵素阻害薬(フィナステリド、デュタステリド)による治療

5α還元酵素阻害薬は、男性型脱毛症の治療に効果的であることが知られています。しかし、FPHLでの使用は、催奇形性の可能性もあり女性への使用は制限されています。

特に授乳中、妊娠中は使用不可となります。

FPHLは治療可能!

FPHLはすべての年齢の女性に影響を与え、精神的な負担をもたらす脱毛症です。

女性型脱毛症は治療の難しい疾患ではありますがミノキシジル、スピロノラクトン等の有効な薬剤で発毛治療をすることは可能です。

症状が進行している場合は、治療薬の注射によって大きく改善する場合もあります。

薄毛が気になったり、周囲の人に指摘されて嫌な思いをしたりしても、諦めないでください。

病歴、心理的適応、治療、治療目標について、医師に相談してみましょう。

進行性の疾患なので早めの治療が必要です。

まとめ

  • 女性の薄毛は精神的な問題、社会的な問題、夫婦間の問題となることがある
  • 女性の薄毛に基礎疾患がないか病歴聴取が必要
  • 典型的な女性型の薄毛はクリスマスツリー型
  • 原因は完全には特定されていないが女性の薄毛には加齢・遺伝・男性ホルモン・喫煙・血糖値の上昇・紫外線照射等が関わっている
  • 現在の基本となる効果的な治療はミノキシジル、スピロノラクトン
  • 治療の副作用は頻度が低く軽微であることが多い

ベアAGAクリニック院長 清水 崇裕 Takahiro Shimizu

ベアAGAクリニック院長 清水 崇裕 Takahiro Shimizu

【経歴】東京医科大学卒業後、放射線科に入局し、放射線の専門医を取得。大手AGAクリニックで勤務医として約3年間診療現場で実践を重ね経験を積む。2020年2月、新宿三丁目駅の近くにベアAGAクリニック新宿院を開院。
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